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福島家庭裁判所 昭和36年(家イ)87号 審判

申立人 高野ハツコ(仮名)

相手方 佐山治(仮名)

主文

一、昭和三十一年五月十五日為された当事者間の婚姻は無効とする。

二、昭和三十一年七月十三日附当事者間の協議離婚は無効であることを確認する。

理由

一、申立人は農家の寡婦であり、相手方はその作男として雇われていたものであつたが、相手方は申立人にも婚姻意思がありと軽信して無断で前記婚姻届をしたものである。しかし、申立人には固より婚姻意思はなく、又両名間に必ずしも夫婦としての生活事実も認められなかつたものである。従つて右当事者間の婚姻は無効であるべきである。

一、其の後偶々申立人が村役場に出向いた際婚姻届提出の事情を村役場吏員より知らされ、驚いて戸籍訂正のため適宜相手方との間の協議離婚届を作成の上届出された結果前記協議離婚の記載がなされたものであるが、既に婚姻が無効である以上、その無効婚姻を前提としての協議離婚の戸籍記載は抹消されるべきであるが、その抹消については死者との間の離婚と同様に、その無効明瞭であり換言すれば離婚不存在とも言えるので、その抹消については、戸籍法一一四条になされて然るべきである。しかし本件申立人は家事審判法第二三条により協議離婚の無効確認審判を求めるものであるが、相手方がこれを争わなくとも戸籍訂正のためには確認利益はある。

一、以上の事実について当事者間に争なく又事実調査の結果認められるから、家事審判法第二三条に則り主文の通り審判する。

(家事審判官 村崎満)

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